最新の税制改正に要注意!生前贈与と相続の税金トラブルを避けるために気をつけるべきこととは?
「親の税金トラブルを避けるにはどうすればいい?」と悩んでいませんか?
贈与税と相続税に関する法律は年々改正されており、税金トラブルに巻き込まれないためには、最新の税制改正を把握しておくことが大切です。
特に、2024年1月1日から開始された税制改正では、贈与税と相続税に関わる大きな改正が行われました。終活を進める際は、財産の整理や管理などに大きな影響を与える可能性があります。
本記事では、最新の税制改正についてわかりやすく解説し、税金トラブルを避けながら、生前贈与と相続税対策を進める方法についてまとめています。
税金トラブルを避けるために気をつけるべきこと
では、今回の税制改正を踏まえて、相続税や贈与税に関するトラブルを避けるためには、どのような点に気をつければよいでしょうか。以下にてまとめてみました。
①これまでの相続税対策は見直すこと
税制改正を受け、これまでの相続税対策は見直す必要が出てきました。というのも、今回の改正は複雑であるため、過去の対策が通用しなくなっている可能性があるのです。
たとえば、生前贈与を計画していた場合、加算期間が7年に延長されたことで、今まで以上に長期的な視点で贈与を進める必要が出てきました。
もし、すでに行っている相続税対策があるならば、再度専門家に相談し、計画を見直すことがトラブル回避につながるでしょう。
②相続時精算課税を選択すると暦年課税には戻れない
相続時精算課税は、一度でも選択すると暦年課税に戻ることができません。よって、制度利用時には将来の相続や、贈与の計画を十分に立てた上で判断する必要があります。
たとえば、一度に大きな財産を移転したいという理由で相続時精算課税を選ぶことは効果的ですが、相続発生まで長期にわたって生前贈与の非課税枠のメリットを受けられなくなる点を考慮しなければなりません。そのため、選択した制度が後戻りできないことを理解し、どちらの制度を利用すべきかについては慎重に判断しましょう。
③生前贈与前に専門家への相談を
今回の税制改正により、一般の方が相続税対策をするハードルはより高くなったといえます。
そのため、生前贈与や相続税対策を計画しているのであれば、事前に税理士や弁護士といった専門家に相談することを推奨します。特に、贈与額やタイミングによって税金の負担が大きく変わってしまうため、素人目で判断を行うと予想外の税負担が発生しかねません。
また、相続や贈与に関連する法制度は複雑であり、誤った理解が原因で大きなトラブルが発生するケースも少なくはありません。事前に専門家に相談し、十分に検討を重ねた上で贈与や相続税対策をすることで、将来的なトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
贈与税の課税方式は2種類
贈与税には、「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」という2つの課税方式があります。
まずは、それぞれの仕組みについて簡単に見ていきましょう。
暦年課税制度を利用した暦年贈与と生前贈与加算
暦年課税制度は、1年間にした贈与の合計額に対して課税される制度です。
ただ、すべてが課税対象になるわけではなく、年間110万円の非課税枠が用意されています。そして、この非課税枠を利用して行う贈与を「暦年贈与」といい、親や祖父母が毎年少しずつ財産を減少させるための、相続税対策の1つとして知られています。
しかし、注意が必要なのは「生前贈与加算」というルールです。
贈与者が亡くなる前の一定期間内に行われた贈与は、相続財産に加算されて相続税の対象になるというものです。単に贈与を続けていれば、相続税対策になるわけではありません。
特に、今回の税制改正で加算対象期間が変更されているため、後述する改正点を踏まえて計画を立てる必要が出てきました。
相続時精算課税制度の仕組み
相続時精算課税制度は、親や祖父母が60歳以上で、18歳以上の子や孫に対して贈与を行う場合に、合計で2,500万円までの贈与が非課税となる制度です。
ただし、相続時精算課税制度を選択すると、贈与税の課税が一時的には免除されるのですが、相続発生時に、これまで免除されていた贈与分が相続財産に加算されてしまいます。
結局のところ相続税の計算に反映されてしまうため、これまで相続時精算課税制度は、単に税金を後回しにするという使い勝手が悪い制度とされていました。
しかし、相続時精算課税制度についても、今回の税制改正にて大きな変更が加えられています。
暦年課税の注目すべき改正点
2024年から始まった暦年課税制度について、注目すべき改正点は次の2つです。
生前贈与の加算対象期間が3年から7年に
2024年から、生前贈与加算の対象期間が「3年」から「7年」に変更されます。
これまでは、贈与者が亡くなる前3年以内の贈与が相続財産に加算されていました。しかし、2024年1月1日以降は7年に延長されることになりました。相続税の節税を目的とした、いわゆる「駆け込み贈与」を防ぐための改正とされています。
これにより、相続税対策として暦年贈与を行う場合は、今まで以上に長期的な計画が求められるようになりました。
延長4年間の贈与は100万円まで相続財産に加算されない
加算対象期間が7年に延長された一方で、延長された4年間に関しては、年間100万円までの贈与は相続財産に加算されないというルールも新たに設けられました。これは、比較的小額の贈与を行う場合であれば、引き続き相続税対策として有効であることを意味しています。
たとえば、延長された4年間で毎年100万円以下の贈与を行えば、その部分は相続財産に加算されないため、非課税のまま贈与を続けることが可能です。
ただし、100万円を超える金額は贈与税が課されるため、贈与額やタイミングについては十分な計画が必要です。
相続時精算課税の注目すべき改正点
相続時精算課税制度について注目すべき改正点は、次のとおりです。
新たに110万円の基礎控除の創設
2024年から始まる税制改正によって、相続時精算課税制度に基礎控除が追加されました。
具体的には、贈与者から財産を受け取る際、1年間に贈与された財産総額から110万円が基礎控除に含まれるというものです。
基礎控除分は贈与税の課税対象外となり、さらに贈与者が死亡した際、相続財産に加算される金額からも差し引かれることになります。この基礎控除の創設により、相続時精算課税制度を利用する人は、これまでにない柔軟な資産移転が可能となりました。
さらに、これまでは少額の贈与であっても、いちいち税務署への申告が必要でしたが、今回の改正により、基礎控除内の贈与であれば申告が不要になります。
どちらの制度を利用すべきか?
終活における財産の整理や管理などを考慮する際、暦年課税制度と相続時精算課税制度のどちらを選択すべきかは、贈与者である親の年齢や健康状態などを考慮すべきです。
親の年齢と健康状態などを考慮すべき理由
親がすでに高齢であり、近い将来に相続が発生する可能性が高い場合は、相続時精算課税制度を利用するのが良いでしょう。なぜなら、亡くなる直前の贈与であっても、年110万円以内であれば贈与税も相続税もかかる心配がなくなります。
また、相続時精算課税制度を利用し、一度に大きな財産を移転することも選択肢として検討できます。特に、将来価格が上がりそうな財産を優先的に移転するのが効果的です。
たとえば、1000万円分の株式を生前贈与した後、相続時に1500万円に値上がりしていたとしても、生前贈与時点である1000万円分しか生前贈与加算はされず、500万円分は課税されないで済みます。
一方で、親がまだ若く、相続までの期間が長いと予想される場合は、暦年課税による非課税枠を利用しながら、贈与をコツコツ積み重ねることが有効です。加算期間が7年に延長されたとはいえ、長期目線で相続税対策をするのであれば、いまだ有効な方法の1つです。
このように、どちらの制度を利用すべきかは、親の年齢や健康状態などを考慮しましょう。
まとめ
本記事では、最新の税制改正に基づいた生前贈与と相続税の対策について詳しく解説しました。
贈与税には暦年課税と相続時精算課税という方式があり、それぞれの制度に注目すべき改正が加えられています。特に、暦年課税の加算期間が3年から7年に延長されたことや、相続時精算課税に110万円の基礎控除が新設されたことは、今後の相続税対策に大きな影響を与えるでしょう。
そんな中、相続や贈与に関する税金トラブルを避けるためには、適切な制度の選択と専門家からのアドバイスを受けることが重要です。終活の一環としても、早め早めの対策を行うことで家族の負担を減らし、スムーズな相続手続きが実現できるでしょう。
この記事を書いた人
永瀬 優
大学卒業後、地域を代表する法律事務所にてパラリーガルとして10年間勤務し、債務整理、相続、離婚、交通事故など多岐にわたる法律実務に携わりました。その知識と経験を基に、現在は法律ライターとして活動中。実務経験に裏付けられた正確で信頼性の高い執筆を心がけ、多くの読者に役立つ情報を提供しています。