相続税と生命保険の関係とは?生命保険が相続税対策に効果的な理由
今回の記事では、相続税の節税対策の中でも生命保険の活用方法を掘り下げ、その重要性を明らかにします。多くの人々にとって、生命保険は日常生活に密着しています。定期保険や終身保険、医療保険、がん保険など、1件や2件、加入されている方も多いのではないかと思います。この身近な存在が相続税の節税対策にどれほど効果的に活用できるかは十分に認識されていないかもしれません。
生命保険の活用は、最も簡単な相続税の節税対策と言ってもよいかもしれません。ご両親と一緒に相続対策を考えるにあたって、「生命保険は相続対策の第一歩」と考えてもいいと思います。ご両親がどのような生命保険に加入しているかを一緒に確認することから、相続対策を始めてみてください。
この記事では、相続税の節税対策における生命保険の活用方法について解説します。また、相続対策における節税以外の生命保険の効果についても解説します。とても簡単ですので、「これならうちでもできる!」と思って頂けるのではないかと思います。
相続税の基礎控除
生命保険を活用した節税対策のお話の前に、節税対策が必要かどうかを確認することが大切です。「相続税の基礎控除」を超える相続財産がある場合に相続税がかかる可能性が出てきます。法定相続人が配偶者と子ども3人の場合には、5,400万円(=3,000万円+600万円×4人)です。
相続税の基礎控除=3,000万円×600万円×法定相続人の数
逆に、「相続税の基礎控除」を超える相続財産がない場合は、相続税はかかりません。節税対策の必要もありません。先ず、不動産、金融資産等を合わせた財産が基礎控除の額を超えるかどうか把握しましょう。
生命保険金の非課税枠
皆さんは、「生命保険金の非課税枠」という言葉を聞いたことがありますか? 例えば、お父さんが亡くなって、お父さんが掛けていた生命保険から保険金が支払われた場合、預貯金等と同じように相続税の課税対象となります。ただし、相続発生に伴い相続人に支払われる死亡保険金の一定額までは、相続税の計算上非課税扱いとなる場合があります。 「生命保険金の非課税枠=500万円×法定相続人の数」 例えば、法定相続人が配偶者と子ども3人の場合、2,000万円(=500万円×4人)まで非課税扱いとなります。相続税の基礎控除が5,400万円でしたので、生命保険を効果的に活用すれば、7,400万円(5,400万円+2,000万円)まで非課税の枠を広げられる訳です。 「生命保険金の非課税枠」が2,000万円の場合、その方に適用される税率が20%だとしたら、400万円(=2,000万円×20%)節税することができる訳です。ちょっといい車1台分ですから、結構大きいですよね。 国税庁の統計によると、亡くなって相続税申告の対象となった方のうち、「生命保険金の非課税枠」を枠一杯まで活用されている方は3割程度だそうです。相続税申告の対象となる資産家でも3割程度ですから、皆さんのご両親も意外と枠一杯までは生命保険に加入されていないかもしれません。是非チェックしてみてください。 ただし、「生命保険金の非課税枠」が適用されるためには一定の要件があるので注意が必要です。1点目は契約者(保険料を支払う人)と被保険者(保険の対象となる人)が同じであること、2点目は死亡保険金受取人(保険金を受け取る人)が被保険者の相続人であること、この2点です。例えば、お父さんが保険料を支払ってるお母さんの生命保険は対象外です。お孫さんが受取人となっている生命保険も対象外です。ご両親の生命保険の契約形態がどのようになっているかチェックしてみてください。 また、「生命保険金の非課税枠」を効果的に活用する大切なポイントがあります。法定相続人が配偶者と子どもとなる一次相続の場合、生命保険の受取人は子どもにしてください。受取人を配偶者にしてしまうと、節税効果が半減してしまいます。配偶者には「配偶者の税額軽減の特例」という税額控除が適用されるからです。金融資産の相続の仕方について、「生命保険は子どもに、配偶者には預金を」という鉄則を覚えておいてください。 もし、ご両親が加入されている生命保険が「生命保険金の非課税枠」を使い切っておらず、預貯金に余裕資金がある場合、一時払終身保険への加入を検討してみてください。
生命保険の節税対策以外の効果
生命保険の節税対策における効果はお話してきた通りですが、生命保険には節税以外の相続対策の効果もあります。 一つ目の効果は、受取人指定による指名効果です。受取人を配偶者や子供、孫に指定することで、指定された受取人は相続発生に伴い死亡保険金を受け取ることができます。特定の相続人に法定相続分よりも多く受け取らせることもできます。これだけお話すると遺言と同じと思われるかもしれませんが、生命保険は遺言よりも効力が強いです。死亡保険金は「受取人固有の財産」という性格があります。つまり、その方が元々持っていた財産と何ら変わりませんので、当然、他の相続人と遺産分割協議を行う必要もない訳です。 二つ目の効果は、円滑な現金準備の効果です。先ず、比較対象として「預貯金」を相続して受け取るまでの流れを解説します。亡くなった方の「預貯金」は相続が発生した瞬間に「相続人全員の共有財産」となります。したがって、相続人の一人が引き出そうとしても引き出せません。遺産分割協議で相続人全員が合意しないと引き出せません。預貯金を引き出す際には、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書、戸籍謄本等の書類を揃えないと引き出すことができません。一方、生命保険の死亡保険金は、先ほどお話したとおり「受取人固有の財産」ですので、受取人一人で受け取る手続きをすることができます。遺産分割協議書も相続人全員の印鑑証明書や戸籍謄本も必要ありません。相続発生後に受取人一人で書類を揃えて保険会社宛に請求すれば、1週間程度で受け取ることができます。相続発生後には、病院への支払い、葬儀代、仏壇購入代、遺族の生活費等のお金がかかりますが、これらの準備には円滑に現金準備できる生命保険が適しています。
まとめ|生命保険は相続対策の第一歩
相続対策には3つの柱があると言われています。1⃣遺産分割対策、2⃣現金準備、それから今日のメインテーマの3⃣節税対策です。今回の記事でお話してきた通り、生命保険に1件加入するだけで、相続対策の3つの柱すべてに手を打つことができます。
ご両親と相続対策を検討する上で、「生命保険は相続対策の第一歩」と考えてもいいと思います。ご両親が生命保険に加入しているか、保険金額はいくらか、保障期間はいつまでか、契約者と被保険者は同じ人になっているか、受取人は子どもになっているか、チェックしてみてください。お父さんは十分な保険金額の生命保険に加入していても、お母さんは生命保険にまったく加入していないというご家庭が意外と多いのが実態です。ご両親の二人目が亡くなった際、いわゆる「二次相続」の方が「一次相続」よりも節税対策の必要が高いので、ご両親いずれかおひとりではなく、ご両親それぞれの生命保険をチェックしてください、
そして、ご両親が相続対策目的で生命保険に加入する必要性がある場合には、一時払終身保険がおすすめです。払い込んだ金額以上の保険金額が一生涯続きますので、いつ相続が発生しても大丈夫です。一時払終身保険には様々な種類があります。円建保険と外貨建保険、固定利率で運用する定額保険と投資信託で運用する変額保険、それぞれに長所と短所があります。
生命保険の加入にあたっては、商品ごとに加入年齢の上限が設定されており、健康状態の告知が必要となる場合もあります。一時払終身保険については、90歳まで加入できるものや、健康状態の告知の必要のない商品もありますので、ご高齢のご両親でも大丈夫です。
生命保険についてはたくさんの選択肢がありますので、ご両親がご自身で情報を集めて適切な判断をするのは簡単ではありません。是非皆さんもご両親と一緒に検討してあげてください。