相続財産、遺産がもらえなかったらどうすればいいの?遺留分について知っとくべきこと3選
「ちゃんと私にも遺産がもらえるのかな」
親が高齢になってくると、皆さん相続について考えだすと思います。そんな中で、例えば遠方に暮らしていると、実家での相続について心配になることもあるでしょう。特に、他の兄弟が実家で生活している場合、自分に遺産が残されないのではないかと不安を感じることもあるかと思います。
そんな不安をお持ちの方に、今回は「遺留分」について解説していきます。「遺留分」について知ることで、「本来もらえるはずの遺産が全然もらえなかった」とか、「知らない間に相続手続きが終わっていた」といった相続のトラブルの解決ができるようになります!
なぜなら「遺留分」とは、相続で遺産がもらえなかったときでも、最低限受け取れる取り分のことだからです。
今回の記事では「遺留分」という言葉を初めて耳にした方でもわかるように、最低限知っておくべきことを3つ説明しますので、ぜひ参考にしてみてください。
遺留分とは?
遺留分とは、相続人に保障されている相続財産で、子や配偶者などの法定相続人であれば、必ずもらえる取り分のことです。なぜなら遺留分は、民法で定められた、相続人に与えられる権利だからです。例えば、遺言で遺産が受け取れないことになっていたとしても、遺留分を請求できます。
遺留分について知っておくべきことその1~遺留分を請求できる人~
遺留分を請求できるのは、法定相続人です。法定相続人とは民法で決められている、遺産を相続する権利を持つ人のことです。
法定相続人には配偶者、子ども、孫、両親、兄弟姉妹などが含まれます。
ただし注意が必要で、兄弟姉妹は遺留分請求ができないことになっています。なぜなら遺留分はもともと、相続人が遺産を受け取れないことで生活に困ってしまったり、家族を養えなくなってしまうことがないように、最低限の財産を確保することを目的に定められたものだからです。もちろん、生活に困っていなくても、法定相続人であれば遺留分を請求できますので安心してください。
まとめると、遺留分を請求できる人は主に
- 配偶者
- 子(直系卑属)
- 親(直系尊属)
ということになります。まずは自分が遺留分を請求できるか、確認してみましょう。
遺留分について知っておくべきことその2~遺留分の割合~
遺留分は法定相続分の1/2!
遺留分の割合は、民法によって定められています。通常、遺留分は法定相続分の半分とされていて、親(直系尊属)のみが相続人の場合は、1/3となります。
例えば、配偶者と子どもがいる場合、配偶者の法定相続分は1/2、子どもの法定相続分は1/2ですが、遺留分はそこからさらに1/2をかけた1/4になります。
遺留分がどれくらいもらえるか、これだけだとわかりにくいと思います。なぜなら法定相続で受け取れる遺産の割合は、相続人が何人いるかによって変わってしまうため、計算が複雑になりやすいからです。
「実際自分がどれくらいもらえるの?」気になる方は次の例を参考にしてみてください。
ケーススタディその1 A子さんの場合
A子さんは、遠方で暮らしている35歳の専業主婦で、兄との二人兄妹です。実家は農家で、兄が家業を継いで父と同居しています。母は亡くなり、父が高齢になってきて、もし亡くなったとき、遺産を受け取れないのではないかと心配しています。
A子さんの場合、法定相続人として遺留分を請求することができます。なぜならA子さんは法定相続人に該当するからです。もし父が遺言で兄に全財産を相続すると残していたとしても、遺留分を請求できます。
その場合のA子さんがもらえる割合は、1/4となります。計算方法を詳しく説明すると、まず法定相続分は1/2となり、そこから遺留分はさらに1/2をかけた1/4となります。そのため、遺言で兄に全財産を相続するとなっても、その財産の1/4は受け取ることができます。例えば相続財産の総額が1億円だった場合、A子さんが遺留分侵害額請求で受け取れる遺産は1/4の2,500万円となります。
ケーススタディその2 B子さんの場合
B子さんは三姉妹の末っ子で、現在40歳の主婦です。姉妹は全員結婚して、故郷で残された一人暮らしの母の面倒は伯父が見ています。母が亡くなった際、遺言で全ての遺産が伯父に譲られることになっていたとします。
B子さんの場合、法定相続分は1/3です。遺留分は法定相続分の半分と定められているため、B子さんの遺留分は1/6となります。遺言で遺産が伯父に譲られる場合でも、B子さんは遺留分1/6となる遺産を受け取る権利があります。遺産総額が1億2,000万円だった場合、受け取れる金額は2,000万円になります。
遺留分について知っておくべきことその3~遺留分の請求方法~
最後に、遺留分の請求方法について解説します。ここでは大まかな請求方法の流れについてだけ知っておけば問題ないと思います。なぜなら、遺産の総額を計算したり、内容証明を送ったり、訴訟をしたりといった手続きは、弁護士など法律の専門家からの協力なしで完結することがとても難しいからです。実際に請求するときは、専門家に相談することをおすすめします。
~遺留分侵害額請求の流れ 手続きは主に6つ!~
遺留分の請求方法は、主に6つのステップがあります。
- 遺産の調査
- 遺留分の計算
- 遺留分侵害額請求の通知
- 遺産分割協議
- 裁判所での手続き(遺留分侵害額調停・遺留分侵害額訴訟)
- 遺留分の受け取り
(1) 遺産の調査
まずは遺産がどれだけあるか、調査をします。遺産の額がわからないと、遺留分をどれだけ請求していいのかわからないですよね。遺産は現金だけではなく、不動産や株など様々なものが含まれます。
(2) 遺留分の計算
遺産の詳細が分かったら、遺留分の額を計算します。先ほど紹介した計算式に当てはめてみてください。
(3) 遺留分侵害額請求の通知
次は、他の相続人に対して「私にはこれだけの遺留分があるので話し合いましょう」という意思表示をします。なぜなら、いきなり「裁判だ」と大ごとにするよりも、穏便に相続を済ませる方が誰にとっても良いですし、裁判所は話し合いがどうにもならないときの最後の手段という意味合いが強いからです。証拠が残るように、内容証明を利用することが多いです。
(4) 遺産分割協議
遺留分があることを通知して、相手が話し合いに応じてもらえたら、相続人全員で遺産の分け方を話し合うことになります。ここで全員が納得できた場合、次のステップを飛ばして遺留分の受け取りになります。
(5) 裁判所による手続き
話し合いでお互いが納得できなかったときは、裁判所を通した手続きを行わなければなりません。なぜなら当事者間の話し合いでまとまらないため、裁判所が間に入り、ある程度強制力を持って和解へと話を進める必要があるためです。裁判所での手続きは「遺留分侵害額調停」と「遺留分侵害額訴訟」があります。これらの手続きはとても難しいので、「調停」→「訴訟」という順番だけ覚えておけば、初めての方はOKです。
(6) 遺留分の受け取り
遺産の分け方が最終的に決まったら、遺留分を受け取ることができます。
まとめ
今回の記事では、遺留分について説明しました。遺留分の制度は、法定相続人が最低限の遺産を受け取ることができるようにするための重要な仕組みです。遺留分について知ることで、「遺産がもらえない」「もらえる遺産の額が納得できない」といった相続トラブルに柔軟に対応できるようになります。