親が認知症になったらどうする?相続手続きで困らないための事前対策を解説!
「親が認知症になったら相続手続きに影響がある?」と不安に思っていませんか?
認知症が進行すると、親自身が財産管理や法的手続きを行うのが難しくなり、家族が手続きを代行しなければならないケースが増えてしまいます。認知症が進行しすぎる前に、終活の一環として必要な対策を事前に講じておくことが大切です。
本記事では、親が認知症になる前に取っておくべき相続対策について詳しく解説します。
親が認知症になる前の相続対策4選
親の認知症が進行する前に、事前にしっかりとした相続対策を講じておくことで、親の意思を尊重した相続がスムーズに進められます。
親が認知症になる前に行うべき4つの相続対策とは、主に以下の4つが挙げられます。
- ・生前贈与
・遺言書
・成年後見制度
・家族信託
記事の下部にて詳しく解説しておりますので、ぜひご確認ください。
親が認知症になったらどうする?
親が認知症になると、日常生活や財産管理に大きな影響が生じます。
相続手続きにおいても、認知症が進行することで本人が適切な判断を下せなくなり、手続きが難しくなるケースがほとんどです。
たとえば、認知症の方が遺言書を作成しても無効になる可能性があります。なぜなら、遺言書を有効とするためには、作成者の判断能力が必要です。
しかし、認知症が進行して判断能力が欠如すると、民法上、遺言書の効力は無効とされてしまいます。よって、認知症の兆候が見られたら、早期に適切な対策を取ることが重要です。
認知症とは
そもそも認知症とは、脳の機能が低下し、日常生活に支障が出る状態を指します。
認知症にはいくつかの種類がありますが、最も多いのはアルツハイマー型認知症です。これは脳の一部が萎縮することで徐々に進行し、記憶力や判断力の低下が見られます。
現在の日本は高齢化社会であり、2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると予測されています。親の老後に向けた整理や準備、つまり、終活としての早期対策が重要です。
親が認知症になるリスク
親の認知症が進行すると、次のようなリスクが伴います。
財産管理の困難
本人が預貯金や不動産の管理を満足にできなくなるため、家族が代行しなければなりません。
たとえば、親が保有する不動産を処分したい場合でも、認知症の進行度によっては判断能力が認められず、売却できなくなってしまうケースはめずらしくありません。
事故や行方不明の恐れ
認知症が進行すると、道に迷ったり交通事故に巻き込まれたりするリスクが高まります。
実際に、徘徊中に行方不明になってしまうケースも多く報告されています。
詐欺被害のリスク
判断力が低下することで、詐欺にあいやすくなります。
たとえば、電話での詐欺に引っかかり、大金を騙し取られるといった被害が報告されています。
契約や相続手続きの無効化
認知症が進行し、判断能力が失われると、契約や相続手続きが無効になる可能性があります。
家族が代行できない手続きが増えると、トラブルに発展するリスクも高くなります。
親が認知症かな?と感じたらすべきこと
親に対して認知症の疑いを感じたときには、早期に行動を起こすことが大切です。
症状が進む前に適切なサポートや対策を講じることで、家族の負担を軽減するだけでなく、親自身も安心して生活を続けられるようになります。
地域包括センターに相談する
地域包括支援センターは、高齢者やその家族をサポートする公的な相談窓口です。認知症の症状に関する相談や、介護・医療に関するアドバイスを提供してくれます。
特に、初期段階での認知症の症状に不安を感じたときには、医療機関の紹介や介護サービスの利用に関する情報を提供してもらえるメリットがあります。
また、地域包括支援センターでは、社会福祉士などの専門家もサポートしてくれるため、親の状況に応じた適切な対応策を提案してもらえる点も大きなメリットです。
財産管理について取り決める
親の認知症が進行しすぎてしまう前に、財産管理や相続に関する取り決めをしておくことも非常に重要です。認知症が進行し、判断能力が失われると、預貯金の管理や不動産の売買、相続の話し合いが進められなくなる可能性があります。
これらを防ぐためには、主に以下3つの点について家族で話し合い、準備を早めに進めることが、将来的なトラブルを防ぎ、親の意向を尊重した財産管理を行う上で重要です。
財産の管理方法
家族信託や任意後見制度などを利用して、財産管理の権限をどのように移譲するかを決めます。
財産の管理方法が定まれば、不要な財産を早めに処分するなどし、現金として保管しておくことで親の施設費・介護費など、将来かかる費用を補填することも可能です。
生活費の管理
親の介護費用や生活費をどう賄うか、毎月の支出を管理する方法を決めておきます。
たとえば、介護費用がどのくらいかかるかをシミュレーションし、費用が不足するようであれば、各家族で分担する取り決めをしておくと安心です。
相続の取り決め
親の意思に基づいて、どのように財産を分配するかを明確にしておくことも重要です。
たとえば、どの家族にどの財産を相続させるかを生前に話し合っておくことで、後のトラブルを避けられます。可能であれば、後述する遺言書を作成することを推奨します。
親が認知症になる前の相続対策4選
親の認知症が進行する前に、事前にしっかりとした相続対策を講じておくことで、親の意思を尊重した相続がスムーズに進められます。
以下では、親が認知症になる前に行うべき4つの相続対策について詳しく解説します。
生前贈与
生前贈与とは、親が保有する財産の一部を生前のうちに子どもや他の相続人に譲り渡す方法です。不動産や預貯金を生前に贈与することで、相続税の対策としても効果的とされています。
生前贈与のメリットとしては、家族間で計画的な財産移転ができるため、相続トラブルを未然に防ぐことが挙げられます。
たとえば、親が健康なうちに自宅を子どもに贈与しておけば、介護が必要になった際に自宅を売却して介護費用に充てることができるため、生活に必要な資金を確保できます。
ただし、非課税枠である年間110万円を超える贈与には贈与税が課されるため、贈与は慎重に行う必要があります。財産の額や分配方法については、税理士や公認会計士といった専門家の助言を受けながら、準備を進めることをおすすめします。
遺言書
親が認知症になる前に、遺言書を作成することも相続対策のひとつです。
遺言書があれば、親の意思に基づいて財産を分配でき、相続争いを防ぐことができます。
特に、公正証書遺言であれば、公証人が作成に携わるため法的な有効性が高く、後から無効とされるリスクが低いのが特徴です。たとえば、親が「自宅は長男に相続させたい」という意思を遺言書に明記しておくことで、後に相続トラブルを避けることができます。
ただし、遺言書を作成する際には、本人の判断能力がしっかりしていることが前提となります。認知症の進行によって判断能力が失われた場合、遺言書の有効性が問われることがありますので、早めの作成が推奨されます。
成年後見制度
成年後見制度は、認知症などで判断能力が低下した際に、家庭裁判所が選任した成年後見人が本人に代わって財産管理を行う制度です。
成年後見制度には、既に判断能力が低下している場合に利用する法定後見制度と、判断能力がまだあるうちに自ら後見人を選んでおく任意後見制度の2つがあります。
法定後見制度は、家庭裁判所が後見人を選任し、家族が後見人に選ばれない場合には第三者である弁護士や司法書士が後見人になるケースもあります。
一方、任意後見制度では、親に判断能力があるうちに信頼できる家族を後見人に選び、財産管理を行わせることが可能です。たとえば、親が任意後見制度を利用して子どもに不動産管理を任せると、認知症を発症しても安心して財産を管理してもらうことが可能です。
なので、成年後見制度は、認知症の進行後でも財産管理を適切に行う手段として有効です。
家族信託
家族信託は、親が子どもなどと信託契約を結び、財産の管理や運用を託す制度です。
信託契約によって、親の財産を子どもが管理し、認知症の進行後もスムーズに財産の運用や管理が行えるようになります。
家族信託の最大のメリットは、認知症が進行しても契約に基づき、財産管理が続けられる点です。たとえば、親が所有するアパートやマンションなど家族信託により子どもに管理させることで、親が判断力を失っても、不動産の売却や運用をスムーズに進められます。
家族信託は財産が多く、相続に複雑さが伴う場合に非常に有効な対策の1つです。長期的な財産管理を見据えた相続対策としておすすめです。
まとめ
本記事では、親が認知症になる前、進行が進みすぎてしまう前に講じておくべき相続対策について解説しました。認知症が進行すると、本人が財産管理を行うことが難しくなり、相続手続きがスムーズに進まなくなる可能性があります。
生前贈与や遺言書の作成、成年後見制度や家族信託といった手段を用いて、相続に関するトラブルを未然に防ぐことが重要です。
こうした対策は、終活の一環として早めの提案を親にすることで、家族の負担を軽減し、親の意思を尊重した相続を実現することができるでしょう。
この記事を書いた人
永瀬 優
大学卒業後、地域を代表する法律事務所にてパラリーガルとして10年間勤務し、債務整理、相続、離婚、交通事故など多岐にわたる法律実務に携わりました。その知識と経験を基に、現在は法律ライターとして活動中。実務経験に裏付けられた正確で信頼性の高い執筆を心がけ、多くの読者に役立つ情報を提供しています。
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