親の万が一に備える!体験談から学ぶ、今確認しておきたい10のこと
親が年齢を重ね健康や生活に変化が見え始めたり、親と同世代の方の訃報を耳にするようになると自身の親の「万が一」の時のことを考えて不安になったり心配なる方も多いのではないでしょうか。
しかし、具体的にどのような準備をすればよいのか、どこから手を付けるべきか悩むことも多いのではないでしょうか。
この記事では、親が亡くなる前に確認しておくべき10の重要なポイントを紹介します。
これらを事前に話し合い、準備することで親が介護が必要になった時や親の看取りの際に家族全員で穏やかに見守ることができ、後悔のない選択ができるようになるでしょう。
親から話を聞いていなかったため、親が他界した後に苦労した筆者の体験談も紹介しています。親と話し合う際の参考にしてください。
1.遺言書の有無と内容を確認する
まず最初に確認しておくべきことは、親が遺言書を作成しているかどうかです。
遺言書は親の財産分配に関する意思を明確に示すものであり、遺言書がないと相続の際にトラブルが発生することがよくあります。
特に相続に関しては、相続人同士で意見が対立することが少なくありません。
また、遺言書は種類もあり、作成方法にもルールがあります。せっかく作成した遺言書が無効になってしまっては意味がありません。遺言書を作成する場合には、遺言書作成のプロ(弁護士、司法書士、行政書士)に相談してから作成しましょう。
遺言書があれば、親の希望を尊重した形で、スムーズに相続手続きを進めることができます。
・遺言書がない場合、遺産分割で争いが起きやすい
・親に遺言書の作成を促し、最新の内容かどうかを確認しておく
・遺言書の作成は弁護士、司法書士、行政書士に相談する
2.親の財産や借金の状況を把握する
親の財産と負債について正確に把握しておくことは非常に重要です。
特に、預金、不動産、株式、保険など、相続の対象となる財産がどこにあるのかをリストアップしておくことで、相続手続きを円滑に進めることができます。
また、介護が必要になり介護保険サービスを受けることになると親の収入により自己負担額が変わってきます。年金やその他に収入があるか確認しておくことでスムーズに対応ができます。
加えて、ローンやキャッシングを含め、人からお金を借りていないか、クレジットカードの支払い滞っていないか、税金の未払いがないか等、親が借金をしていないかも確認しておきましょう。
子どもへの後ろめたさや子どもに心配をかけたくないという思いから、借金があることを隠しているケースもあります。遺産を相続する際、借金も含まれます。隠していることで結果、子供に負担がかかる場合もあります。
お金の話はデリケートな話題でもあります。日頃から「生活は困ってないか」「なにかあったらすぐに相談して欲しい」など、常に声がけをしコミュニケーションをとっておくことも大切です。
もし、借金がある場合には、弁護士、司法書士、税理士、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談しましょう。
・親の財産リストを作成しておくと相続手続などがスムーズになる
・借金の有無を確認し借金がある場合は専門家とともに軽減する対策を考える
体験談 ①
意思疎通ができなくなってから知った父の借金
筆者の父は60代で急逝しました。仕事もしており元気だったため、終活については全く考えておらず、父自身も同様でした。
しかし、突然体調を崩し意識を失い、そのまま回復することなく1ヶ月ほどで他界しました。
入院後に父の銀行口座を確認すると、数百万円の借金があることが判明。
母が大病を患っていたこともありその入院費、生活費が足りなくなったため借金をしていたようです。ですが、体調が悪くなる中でも家族に相談せず、借金を抱えたまま亡くなりました。
もし相談してくれていれば、実家を売却するなどして返済する手段もあったかもしれません。また、過払い金請求(※)もできた可能性があり、父ももっと楽に過ごせたのではと思います。
筆者は実家を離れていたため父の異変に気が付いていませんでした。離れているからこそもっと積極的にコミュニケーションをとっておけばよかった、と父が他界し十年以上たちますが今も後悔が残っています。
筆者のような後悔をしないためにも親のお金の状況を確認しておきましょう。
※ 過払い金請求:消費者が過去に消費者金融などに払いすぎた利息を取り戻す手続き。2006年の法改正前、高金利での貸付が行われていたため、払いすぎた分を返還請求できる。ただし、請求は最終取引から10年以内に行う必要がある。
3.介護と終末期医療に関する意思確認をする
親が将来的にどのような介護を望んでいるのか、また終末期医療に関する希望を確認しておくことも重要です。
特に延命治療に関する意思は、事前に話し合っておかないと、家族が難しい決断を迫られることになります。
・親が望む介護の形や、延命治療に対する意向を本人と家族で確認しておく
体験談 ➁
延命治療をしない決断の重圧と今も残る迷い
筆者の父が病気で倒れた際に延命治療を行うかどうかで大きな葛藤がありました。
父とそういう時になったらどうしたいか、という話を全くしていませんでした。また、倒れてから意思疎通ができなかっため本人の希望を聞くことが一切できませんでした。
そのため、家族で話し合い延命治療をしない決断をしました。本当に重い決断でした。今でもたまに「あの時の判断はよかったのだろうか…」と心にひっかかるものがあります。
親の希望を事前に聞いておくことで、家族の精神的な負担も軽減することもにもつながります。
4. 葬儀やお墓に関する希望を確認する
親がどのような形で葬儀を行いたいか、お墓についての希望や管理を誰がするのか、費用の負担についても事前に話し合っておくと、後で家族が困らずに済みます。
葬儀はやり直しができないことと家族の感情が高ぶる中で進行するため、準備が不十分だとトラブルが起きやすくなります。
また、最近では、従来の仏教式葬儀だけでなく、無宗教の式や家族葬、納骨も散骨など、様々な選択肢があります。死生観、宗教観は人それぞれです。年代による考え方の違いもあります。家族内で決めた葬儀や納骨のやり方に親戚などから反対意見がでる場合もあります。事前に親と話し合っておくと「本人の希望なので」と伝えることができ、受け入れてもらえることもあります。
トラブルにならなず、みんなが心穏やかによいお別れができるように親が希望する形式をしっかり確認しておきましょう。
・親の葬儀やお墓に対する希望を確認し、家族が納得できる形で準備する
- ・葬儀やお墓の管理などの費用負担も事前に話し合っておく
5.親の交友関係と重要な連絡先を把握する
親の友人や知人の連絡先をリスト化しておくことも大切です。
特に、看取りの時や葬儀の際に連絡を取るべき相手を事前に確認しておくと、スムーズに対応できます。
親の交友関係は年齢とともに変化します。特に重要な友人や関係者が誰かを把握しておくとよいでしょう。
また、地域の活動や趣味のサークルに参加している場合、そのコミュニティの情報も整理しておきましょう。
・最期に会いたい人や葬儀の際に、どの人に連絡を取るか事前にリスト化しておく
・親の重要な連絡先や交友関係を把握し、いざという時に備える
体験談 ③
義父の遺品捜索で感じた、家族との情報共有の大切さ
筆者の他界した義父はテニスサークルに所属していました。
義父の葬儀後、サークル仲間から「会費が入った手持ち金庫の鍵を返してほしい」と連絡がありました。サークルの会費を代表者2名で管理しており、そのうちの一人が義父でした。金庫自体は別の方が管理していましたが、不正防止のため鍵は義父が管理していました。義母もそのことを知らず、鍵がどこにあるのか全く分からない状態でした。
サークルの方とともに義父の部屋を捜索することになりました。物が散乱した中、なかなか鍵が見つからず、会費を代わりに支払うべきかと考え始めた矢先、ようやくタンスの奥から鍵を発見し、事なきを得ました。
家族との情報共有の大切さを強く感じました。特に、家族が知らない情報があると、思わぬ混乱を招く可能性があります。
親が会社やコミュニティなどに所属している場合、その組織で大切な物を持っている、といったことあります。そういった物についても確認しておくことは大切です。
6.デジタル資産の管理
近年、親世代でもインターネットを利用したサービスを活用している人が増えています。
スマートフォンやパソコン、タブレット端末といったデジタル機器に加えて、ネットバンキングやSNSアカウント、サブスクリプションなど、親が持っているデジタル資産の管理についても確認しておく必要があります。
親が亡くなった後、これらのアカウントを放置しておくと、個人情報の流出や不正利用のリスクが高まります。ログイン情報をリスト化し、家族が適切に管理できるように準備しましょう。
・デジタル機器、デジタル資産のログイン情報をリスト化しておく
・親のSNSアカウントやサブスクリプションサービスの契約解除手続きも含めて確認する
7.親の病歴や医療情報を確認する
親がどのような病気を患ってきたか、どの薬を常用しているかなど、医療に関する情報を把握しておくことも重要です。
突然の入院や事故が起きた際に、医療情報をスムーズに提供できるようにしておきましょう。
また、通院している病院や主治医の連絡先、医療保険の加入状況、保険証などの保管場所も確認しておくと安心です。
・親の病歴や医療情報をリスト化し、緊急時に備える
・医療機関や保険証の保管場所などの情報も含めて確認しておく
8. 住居のメンテナンスと今後について確認する
親の住んでいる家の管理も、事前に話し合っておくべき重要なポイントです。
家のメンテナンスには高額な費用がかかる場合があります。年金や貯蓄で支払いが可能か確認しておきましょう。
また、親が施設に入ることになった場合や親が亡くなった後に空き家になる可能性がある場合は家の処分をどうするか、早めに話し合っておくと安心です。
空き家を放置すると固定資産税がかかるほか、空き家対策特別措置法(※)による罰則もあるため、不動産の管理や処分についても計画的に進めましょう。
・親が施設に入る可能性がある場合や空き家になる可能性がある場合、住居の管理方法や処分について話し合う
・空き家対策や固定資産税の支払いについても考慮しておく
※ 空き家対策特別措置法:放置された空き家による地域の景観や安全の問題を解決するために制定。「特定空き家」と認定された場合、所有者に管理や修繕を求められる。所有者が対応しない場合、行政が強制的に対応することもある。
9. 相続税対策を考える
親が多額の財産を持っている場合、相続税が発生する可能性があります。
相続税の負担を軽減するためには、事前に専門家(税理士・ファイナンシャルプランナー・弁護士など)に相談し、適切な対策を講じることが重要です。
生前贈与や遺産分割の計画を立てることで、相続税の負担を軽減できる可能性があります。
専門家と連携しながら、親の財産に対する最善の対策を講じましょう。
・相続税が発生するかどうかを確認し事前に対策をする
- ・税理士やファイナンシャルプランナーなど、専門家に相談して適切な相続計画を立てる
10. エンディングノートの活用を提案する
最後に、親にエンディングノートを作成してもらうことを提案しましょう。
エンディングノートは親の意思や希望を明確にするためのツールであり、遺言書と併せて活用することで、家族がスムーズに意思決定を行うことができます。
エンディングノートには、財産や医療に関する情報だけでなく、親が伝えたいメッセージや希望も記載できます。これを通じて、家族間のコミュニケーションも深められるでしょう。
・親にエンディングノートの作成を促し重要な情報を整理してもらう
- ・エンディングノートは財産や医療情報だけでなく、親の意思や希望を明確にするために役立つ
まとめ:必ずやってくるその日のために…
今こそ親との対話を
親が亡くなる前に確認しておくべき10のことは、単なるチェックリストではありません。
これらは、親も家族も心穏やかに最期の時を迎えるために、親の意思を尊重しながら準備を進めるための大切なステップです。
「死」は必然です。いつか必ずやってきます。だからこそ、親と事前に話し合い、準備を進めておくことで、突然の別れに直面したときも家族全員が落ち着いて行動できるでしょう。
今こそ、親と対話を始める絶好のタイミングです。
忙しさや遠慮から後回しにせず、少しずつでも親の思い、家族の思いを共有しましょう。「死」は決してネガティブなことではありません。「死」について考えることは、よりよく生きるため、家族との大切な時間を過ごしていくための大切な時間です。
親子で共によりよい未来ために話し合ってみましょう。
この記事を書いた人
春風
30代で両親、義父、40代で祖母の相続を経験。
終活をせず旅立った親を持った子の目線で親の終活の必要性や終活のすすめ方をアドバイスしています。