親の不動産相続に関する30代40代の体験談と学び
実家の土地や建物が誰のものか考えたことはありますか。実は住んでいる親の名義ではない場合は、相続の際に関係者が増えてトラブルに発展する可能性もあります。
この記事では義両親の土地の上に建っている実家の事例を参考に、具体的な検討内容を解説します。親と一緒に検討することで老後の生活も具体的になり、親の相続についてもシミュレーションすることができました。
実家の名義を確認して、親が元気なうちに一緒に終活に備えていきましょう。
実家の土地は親の名義ではなかった!
実家は親のものと勝手に考えていましたが、話を聞いてみると土地と建物で名義が異なることが発覚。なぜ異なる名義になったのか、経緯を紐解きました。
離婚した元夫の母親名義の土地
私の実家は地方の県庁所在地にある一軒家で、2歳年上の兄も私も家を出て遠方に住んでいるので母が一人で住んでいます。
父の両親に土地を提供してもらい、その上に大工だった母の父親が家を建築。
ここまでなら両家の協力で建てられた実家という美談で終わりますが、10年ほどして両親は離婚して別々の道を歩むことに。父の両親の御厚意もあり、実家には母と私たち兄弟が住み続けることができました。
名義人は既に認知症なので契約ができない
数年前に父(母から見ると元夫なのでここからは元夫と表記します)の父親が亡くなり、元夫の母親も認知症のため介護施設で暮らしています。
最近になって、元夫から「相続が発生した後に母親名義になっている土地をどうするか考えておいてほしい」と私のところに連絡があり、土地が母の名義ではないことを初めて知りました。
建物は親の名義
登記簿を取り寄せて確認すると、確かに土地は元夫の母親名義で、建物は私の母名義となっていました。ただし、借地料は発生しておらず、土地の固定資産税も元夫の母親が払ってくれていたので、土地に対する権利「借地権」等がありませんでした。
つまり、土地の持ち主から退去を迫られたら抵抗できません。
相続が現実になった際にどういう対応をするのか、母との相談が始まったのです。
土地の相続を想像してみると課題が明確になった
今は御厚意で住み続けられていますが、問題は名義人である元夫の母親が亡くなったときに、この土地を誰が相続するのか、ということです。また、相続した人が亡くなったときに誰の手に渡っていくのかも考えておく必要があります。
土地は誰が相続するのか
元夫には妹がおり、相続人はおそらくこの2人だけだろうと推察されました。
介護施設に入っている母親の面倒を見ているのは元夫でしたし、実家に住んでいる母との関係を考えると実家の土地を相続するのはおそらく元夫だろうと思われます。
ちなみに、元夫が万が一母親より先に亡くなった場合は、代襲相続で私と私の兄も法定相続人となります。可能性が低そうなので、今回は特に検討しないことにしました。
相続人が亡くなった未来も想像してみた
実家の土地を元夫が相続したと仮定して、土地をどうしていくか考えることにしました。とはいえ元夫も70歳近い年齢なので、先のことも考える必要があります。
元夫は再婚相手との2人家族のようなので、法定相続人は再婚相手と私と兄の3人のはずです。元夫は法律に明るい人なので、遺言書により財産は全て再婚相手に相続されるものと考えておくことにしました。
母も高齢になったタイミングで、ほとんど面識のない元夫の再婚相手と土地の契約等のやり取りが発生するのは結構なストレスになりそうです。
親が取れる選択肢の洗い出しと注意点
実家の土地に対してどのような選択肢が取れそうか考えてみると、
- お金を払って借り続ける
- 土地を購入する
- 建物を手放して引越す
という3つの中から検討することになりました。
経済的に有利な賃借契約は感情面と将来に課題アリ
今は借地料の負担もなく住んでいますが、正式に賃借契約を締結して借地として住み続ける選択です。
家賃のような支出が増えるものの、経済的な負担は小さく有力な選択肢です。ところが、元夫と賃借契約を締結しなければいけないし、将来的にその再婚相手ともやり取りの可能性が出てくる、というのは感情面から乗り気ではありませんでした。
土地を取得するためには経済的な裏付けが必要
次に検討したのが土地を取得するという選択です。路線価などから調べてみると地方都市とはいえ60坪ほどある土地なので、1000万円以上の取得費用がかかりそうです。
実際の取引価格がいくらになるかは交渉次第になるようですが、土地を取得するとなると母の老後の経済状況に大きな影響を与えるのは間違いなさそうです。
資産状況や収支を聞き取りながら慎重に検討する必要がありました。
父の形見の実家を手放すのは最後の手段
元夫の母親の土地の上に長年住まわせてもらっていたので、出て行けと言われれば出ていくしかありません。しかし、実家の建物は母の父親が最後に建てた家なので、母にとっては形見のような存在です。
できるだけ長くこの家に住みたい、独身の兄がいざというときに帰る場所を残しておきたい。それが母の願いでした。
経済状況を聞き取りながら一緒に検討
大きなお金が絡むことなので、貯蓄や収支の状況を聞き取り、どの程度の費用を捻出することができるか一緒に検討しました。
親の感情と意思を尊重して土地を取得できるか検討
母の願いを確実にかなえられるのは土地を購入することですが、土地の取得のために老後の生活が破綻してしまっては元も子もありません。土地を購入するだけの費用が捻出できるか、借り入れの可能性も含めて検討しました。
土地の取得に住宅ローンは活用できない
土地を取得するためなら金利が低い住宅ローンを利用できるのではないか、と考えました。
ところが、住宅ローンは新しく住宅を取得するための制度であり、既に住んでいる実家の借地の取得に利用できるのかは事例がほとんどなく調べても分かりません。
ちょうど住宅ローンの借り換えでやり取りしていた銀行の担当者に聞いてみたところ、
「金融機関の判断になるので絶対ダメではないが、一般的に借入は難しい」
という回答でした。
住宅ローンの利用は難しそう、と結論づけて借入せずに取得することを検討しました。
経済的に土地を取得する余裕があるか確認
母の現在の資産状況や年金の見込み額、日常的な支出を事細かに聞きとって一緒に考えました。母は昔から堅実な性格でしたので、長年勤めた会社の退職金に加えて投資からの収益も見込めるとのこと。思っていたより経済的には余裕があります。
資産状況をグラフにしてみると土地を取得しても残った資産を取り崩しながら、100歳近くまで生活できそうなことが分かりました。生活が困窮する前に私たち夫婦も一緒になってサポートすることができそうです。
シミュレーション結果を確認したら自信をもって「土地を購入する」という結論を出すことができました。
相続について親と一緒に考えて得られたこと
相続について親と一緒に考えたことで、大きな決断の難しさを感じました。また、漠然と考えていた親の老後や相続についても具体的に考えることができたのは大きな収穫です。
土地や建物の取引は金額が大きく決断が難しい
若いうちは住宅ローンを組んで家を買うことで、「これから稼いでいくんだ」という仕事に対するモチベーションにつながります。一方で、退職する前後で大きな出費を伴う土地の売買をするのは、生活への影響が大きく慎重な判断が必要です。
最終的には親が判断することになりますが、ものすごくエネルギーを使うので、身近な人と一緒に考える大切さを痛感しました。
60代の親の老後を具体的に想像できた
離れて暮らしていると親の普段の生活すら想像できていませんでしたが、数字を基に経済面から親の暮らしぶりを把握することで、これからの親の生活が具体的にイメージできました。
退職してからどういう生活をイメージしているのか聞けたのも大きな安心材料です。
親の相続をシミュレーションするきっかけ
実家の土地の問題がなければ相続や老後の話をするタイミングがありませんでしたので、面倒な問題ですが正面から向き合って話し合いができてよかったと思っています。
親の相続に関する話は切り出しづらいものですが、実家は兄に相続したいという母の意向を聞くことができたので、いざという時に揉めたりモヤモヤしたりせずに済みそうです。
【まとめ】
実家の土地や建物が親以外の名義になっていると相続の際にトラブルの原因となります。
知らないうちに土地の所有者の相続に巻き込まれて実家を追い出されてしまう可能性もあります。
土地や建物の取引では大きなお金が絡み、決断するには労力がかかるので、親が元気なうちに一緒に考えて安心して老後を過ごせるよう準備していきましょう。