相続人向け

負動産にしないための話②:家族信託や遺言書で守る円満な不動産相続

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前回の「負動産にしないための話①」はお読みいただけましたでしょうか?前回は不動産相続の落とし穴や、適切な相談先についてお話いたしました。今回も書籍『20の事例でわかる 税理士が知らない不動産オーナーの相続対策』の一部内容とともに不動産相続について、実際の事例や、活用法等も交えてお伝えしてまいります。

遺言書、作成してますか?

「遺言書」は資産家の人たちの話で雲の上、一般家庭では家族間での認識が同一であれば問題ない。そうお考えの方も少なくないのではないでしょうか?
筆者も、その一人でした。遺言書なんて、ドラマの中の大富豪でしかみたこともなかったですが、実はすべてご家庭において必要なものなのです。

遺言書とは、財産を誰にどのくらい相続するのかが記載されているもので、法的効力もあります。ただし、せっかく準備しても正しい形で残さなければ無効となってしまいます。遺言書の書き方については別途、お話させていただきたいと存じます。

伝わっている「はず」は危険

とはいえ、うちは日頃から家族全員に何をどうする予定か伝えてあるし万が一のことがあっても円滑に相続手続きが進むはずだとお考えの方もいらっしゃるかと思います。

書籍の中でとある5人兄弟のお話がでてきます。1~4人目の兄弟は家を出ていく際にまとまった資金を両親からもらってましたが、実家暮らしの5人目はご両親の介護等もする代わりに自宅を引き継ぐ話でまとまっていました。

これは上の4人の兄弟も了承済だったはず。なのに、いざご両親が亡くなった後、実は自宅の資産価値が高いことが判明し、5人目の兄弟だけに継がせることを上の4人は許さず、何年にもわたる大きなトラブルに発展したのです。

詳しいお話やその後の展開はぜひ書籍でお読みいただければと思いますが、つまりなにが言いたいのかというと、口約束ほどもろく壊れるものはないのです。
把握していても、わかっていてもご両親が亡くなったあとは「死人に口なし」状態。ご両親の意向を優先することよりも目先の利益を優先してしまいトラブルに発展というケースは少なくないようです。

不動産の価値についても、もちろん変動はあるものの現状どのくらいなのかというのはご家族間で把握されておくといいかもしれません。

約束しているから大丈夫、信頼しあっている家族だからトラブルは起こらないと思っていても、状況は変わるものです。たとえ大きな資産ではなくても、遺言書の準備は行うことが重要です。

引用:20の事例でわかる 税理士が知らない不動産オーナーの相続対策

こういったトラブルは法的効力のある遺言書があることにより、防ぐことができます。トラブル回避はもちろんですが、お金にかかわる部分で揉めたことによりできてしまった兄弟間の溝はそう簡単に埋まるものではありません。大切なご家族との関係を守るためにも遺言書を作成しておくことをお勧めいたします。

その不動産、どう残したい?

不動産を相続する際、難しいのが残し方です。先祖代々受け継いできた土地を守りたい人も活用したい人もいるでしょう。不動産はひとつとして同じものは存在しません。そしてその資産の価値も変動します。
そこにはそれぞれの想いが強くかかわってきます。この残し方についてもぜひ、ご家族間で話し合い、共通の認識をもっておくことでスムーズに動くことができるのでおすすめです。

生前贈与も相続のひとつ

また、生前贈与等で元気なうちに相続をするのもトラブルを回避するためのひとつです。

筆者も主人の祖父母から受け継いだ土地に自宅を建てています。祖父は健在で別宅に住んでおり数年空き家だったこと、娘である義母(主人の実家)はすでにマンションを購入をしていること、孫である主人をかわいがっていたこと、土地をまもりたいという意向から私たち夫婦が、生前贈与としてありがたく受け継がせていただくことになりました。

しかし、祖父にとって義理の息子にあたる主人の父はこれをよく思っておらず、土地を売却してその分の資産を義母が受け継ぐべきだったと何年も小声でいっています。

祖父が祖母と過ごした土地をのこしていきたいと願う想いを大切にする。義父以外は全員そう考えていたので大きなトラブルにはなっていませんがそれ以来義父と主人との間にはわだかまりができました。

今回の場合、生前贈与で祖父が健在していたことでかなりスムーズに進みました。これが亡くなったあとだったら大切な土地を売られていたかもしれないと思うと、正直恐ろしいです。元気なうちの生前贈与もぜひ候補にいれてみてくださいね。

不動産の相続は、「想い」の承継でもあります。節税対策だけにとらわれず法人化などのアイデアを活用することで、資産を大切に守りながら、金銭的な問題もカバーすることができます。

引用:20の事例でわかる 税理士が知らない不動産オーナーの相続対策

書籍の中では想いを大切に相続された事例が複数載っています。家族信託という方法もあるそうです。これについては後ほど記述いたします。
書籍を読むだけでも視野が広がり、アイデアも増えますよ。

「相続税対策」アパートを建てたほうがお得?

不動産として土地を相続した際、相続税対策としてアパートを建てることをお勧めする事業者もいらっしゃるようです。実際に私も家賃収入を得ている知人がいます。
資産運用として不動産を建てたり購入される方も多い昨今ですが、それは果たして「相続税対策」になるのでしょうか?
ここでは、書籍の中で紹介されているGさん(70代女性)のお話をします。

Gさんは3人のお子さんがいらっしゃいます。数年前にハウスメーカーが主催されている相続税についてのセミナーに参加し、「ローンを組んでアパートを建てれば、土地の資産価値が下がるため相続税を減らすことができる」と説明され、ハウスメーカーに勧められるがまま7棟のアパートを建てたそうです。たしかに家賃収入によって所得は増えましたが維持管理費や固定資産税などがかさみ、現金が減っていくことに悩み、ハウスメーカー以外の考えも聞きたいとの思いから司法書士の開催するセミナーに参加。司法書士はこの状況はまずいと判断し不動産の専門家であり、書籍の編著もされている財産ドックに紹介したそうです。

話を聞いていくうちにGさんの現状として、相続税は減らせているけれど、それ以上に出費があるというなんとも本末転倒な状況だったそう。
現状を打破すべく様々なアドバイスをされて結果としてGさんの不安も取り除かれてよりよい状態になっておりますが、この解決策についてはぜひ書籍でおよみください。

Gさんは、ハウスメーカーに不安要素を話しても「アパートを建てれば大丈夫」といわれるのみだったそうです。顧問税理士もいましたが、「お金」のプロではありますが「相続」のプロではなかったため、現金が減っていくからくりに気づき、アドバイスをすることがむずかしかったと考えられます。

本当の相続対策とは相続税を減らすことだけではなく、相続人であるご家族の将来を考え、スムーズに資産を引き継げるようにすることです。(中略)
節税を重視するあまり、自分の本当に行いたい相続とはかけ離れた形で資産を使ってしまっているということは少なくありません。相続の目的をはっきり持ち、それに向けた対策を行うことが一番満足のいく相続につながるはずです。

引用:20の事例でわかる 税理士が知らない不動産オーナーの相続対策

ここでお伝えしたいことは、今回のケースのように「相続税」の節税対策のみにフォーカスをあててしまうと、必要以上の経費がかかり、本末転倒になる可能性があるということです。そうならないためにも、その土地を不動産をどのような形でのこしていきたいのかをしっかりと考え、周囲と相談しながら、そして時には複数の専門家の知恵を借りながら相続対策と向き合うことが大切です。

「家族信託」しってますか?

家族信託という制度をご存じの方、どのくらいいらっしゃるでしょうか。
恥ずかしながら筆者は、つい最近までこの制度について全く知りませんでした。

家族信託とはつまり、認知症や相続の対策として利用されている法的制度です。
一般的に認知症になってしまうと資産が凍結されて手続きが複雑化、財産管理や相続対策ができなくなります。認知症発症後の遺言書等も無効です。
その備えとして、あらかじめ信頼できる家族に財産を託し、本人の希望に沿った財産管理や処分を家族に任すことができる仕組みです。この制度を使うことにより、親が認知症になっても、親の財産は凍結することなく、家族が柔軟に管理できるようになるのです。これはもちろん不動産にも適用されます。
メリットの多い制度ですが、相応の費用がかかります。自分で手続きをする場合はだいたい20万円程度、専門家に依頼した場合はさらに費用がかかるのですが相談先や内容により大きく異なるようです。
専門家に相談しながら自分でできるようであれば費用も抑えることができますね。

これと似た制度で「成年後見制度」というものもあります。今のご時世、知っていると得する情報がたくさんあるのでぜひ、ご自身にとって、ご家族にとって最適な方法での相続の形を見つけてみてください。

まとめ

今回は2回にわたり、不動産についてのお話をしてきました。いかがでしたでしょうか?十人十色で正解がない不動産相続ではありますが、トラブルになった原因が見えたことで何か今後の対策のヒントになりましたら幸いです。

ひとつとして同じものがない不動産だからこそ、そこに存在する「想い」と向きあうこと。これに尽きるのかなと筆者は考えます。トラブルの多い不動産相続ではありますが、きっと、不動産の所有者は自身が亡くなったあとの争いごとを望んではおりません。
家族円満に相続が進むよう日頃からのコミュニケーションを大切にしつつ、準備ができる部分については少しずつ準備をしていきましょう。遺言書も後から変更になったってその時に書き直せばいいのです。
「今」の想いを、大切な不動産を、あるべき形で残せますように。

書籍について

書籍:20の事例でわかる
  税理士が知らない不動産オーナーの相続対策
編著:財産ドック
   https://www.zaisandoc.jp/

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